経理の目標設定はどう決める?方法・具体例をわかりやすく解説

目次

経理の目標設定の基本ステップ

経理の目標設定を行う際には、単に日々の業務をこなすだけでなく、改善や効率化につながる具体的な方法を導入することが重要です。経理業務は請求書処理や経費精算、月次・年次決算など幅広いため、まず全体像を把握し、課題を明確にすることが欠かせません。そのうえで数値を取り入れた具体的な目標を設定することで、達成度を客観的に確認でき、会社全体の管理や評価に反映させやすくなります。また、業務改善に取り組むことで経費削減や効率化にもつながり、個人のスキルアップや部署全体の成果向上も実現できるでしょう。

本章では、経理の目標を作成するための基本ステップをわかりやすく解説し、より具体例に基づいた改善方法へとつなげていくので参考にしてください。

業務の全体像を把握する

経理の目標設定を成功させるためには、まず業務の全体像を把握することが欠かせません。請求書処理、決算対応、経費管理など、経理には数多くの業務が存在します。それぞれの業務内容を明確に管理し、現在の課題やミスが発生しやすい部分を洗い出すことで、改善の方向性がわかりやすくなります。

全体像を確認しておくと、部署や社内全体でのつながりも理解しやすく、目標達成のための数値化や評価方法を導入する基盤が作れます。こうした整理を行うことで、会社や担当者が効率的に業務改善を進め、具体的な目標設定に移行できるのです。

業務改善アイデアを考える

経理の目標を設定するうえで重要なのは、業務改善につながる具体的なアイデアを考えることです。例えば、経費処理の時間を削減する方法や、請求書処理のシステムを導入して効率化を図る方法などが挙げられます。改善アイデアを考える際には、単なる作業の短縮ではなく、モチベーションの維持や組織全体の成果向上につながるポイントを意識することが必要です。

また、業務改善の提案を社内で共有し、部署ごとの目標に反映させることで、経営に関連した効果を生み出せます。こうした工夫は、目標達成のためのステップを明確にし、担当者一人ひとりの役割を強化することにもつながります。

数値化して具体的に設定する

目標設定で最も大切なのは、業務改善のアイデアを数値化し、具体的に設定することです。

「月次決算を2日短縮する」「請求書処理のミスを20%削減する」といった明確な数値を入れることで、目標達成度を客観的に管理できます。数値化された目標は、評価や確認がしやすく、会社や部署の成果としてもわかりやすく反映されるでしょう。さらに、SMARTの法則を活用すれば、具体的・計測可能・達成可能・現実的・期限付きという条件を満たした目標を作成できます。

こうした目標設定は、社員のモチベーション向上や社内業務の効率化に直結し、結果的に経費削減や組織全体の成長をサポートします。

部署の目標から個人の目標へ落とし込む

経理の目標設定を行う際には、会社や部署全体の方向性としっかりとつながりを持たせることが大切です。部署の方針や課題を無視して個人が独自に目標を立てても、業務改善や効率化には結びつきにくく、成果も社内で正しく評価されにくくなります。

まずは部署全体の課題や数値目標を明確にし、その内容を基盤として担当者ごとの業務へ落とし込みましょう。そうすることで、会社全体の管理体制に沿った評価が可能になり、個人の目標達成が組織全体の成果につながります。さらに、このプロセスはモチベーション向上にも効果があり、業務の質を高めるサイクルを生み出します。

次章では、より具体的な方法として「SMARTの法則」を活用し、経理の目標を効果的に設定する手順を解説していきます。

SMARTの法則で経理目標を明確化する

経理の目標を明確化する際におすすめなのが「SMARTの法則」です。

これは、Specific(具体的)、Measurable(計測可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(経営に関連)、Time-bound(期限付き)の5つの要素を満たすことで、実現性の高い目標を作成できる方法です。

経理業務は日々の作業が多く、数値化や改善ポイントが曖昧になりやすいため、SMARTの法則を導入すると、目標の内容がより明確になり、達成度を評価しやすくなります。また、SMARTの法則は経理担当者だけでなく、部署や会社全体の目標管理にも活用でき、モチベーションの維持や業務効率化、経費削減などの成果にもつながります。

Specific(具体的)

経理における目標設定では、まず「Specific(具体的)」であることが必要です。抽象的な表現では業務改善や成果向上につながりにくいため、「請求書処理の時間を30%短縮する」「月次決算を5営業日以内に完了させる」など、誰が見ても明確にわかる目標にすることを意識してみましょう。

具体的な目標は、担当者の仕事の優先順位を整理しやすく、部署や会社の方向性と関連性を持たせやすいというメリットもあります。また、具体化することで達成後の評価や確認も容易になり、社内管理や人事考課にも活用しやすくなります。

Measurable(計測可能)

「Measurable(計測可能)」な目標設定を行うことで、経理業務の成果を数値として把握できるようになります。例えば、「処理件数を1日あたり50件以上に増やす」「経費精算の承認時間を平均2時間以内に短縮する」など、明確な数値を設定すると、達成度を客観的に確認できます。

数値化は、個人の評価基準をわかりやすくするだけでなく、部署全体の目標達成度を管理するうえでも効果的です。また、数値的な管理は、経理業務の改善効果を社内に示す材料にもなり、会社全体の業務効率化や経営判断のサポートにつながります。

Achievable(達成可能)

経理の目標設定では「Achievable(達成可能)」であることが大切です。高すぎる数値や非現実的な改善策は、担当者のモチベーションを下げ、業務の質を低下させるリスクがあります。例えば、「翌月から決算処理を半分の時間で終える」といった目標は無理があり、逆効果になる可能性があります。

達成可能な範囲で設定するには、現状の業務内容や社内のリソースを把握し、段階的に改善できるよう計画を立てることが重要です。社員の成長と会社全体の効率化の実現のために、現実的でありながら少し挑戦的な目標を設定してみましょう。

Relevant(経営に関連)

経理の目標は、部署や会社の経営に関連していることが必要です。例えば、「経費削減につながるシステム導入を提案する」「社内全体の決算スケジュールを短縮して経営判断を早める」といったように、経営目標や部署の方針とつながりを持たせることが重要です。

個人が達成した目標が会社の成果に反映されれば、組織としての成長を実現しやすくなるでしょう。また、Relevantを意識することで、業務改善や効率化の方向性がぶれにくく、社内での評価や信頼性も高められます。経理担当者は、自分の仕事が企業経営に直結していることを理解しながら目標設定を行うことが大切です。

Time-bound(期限のある目標)

「Time-bound(期限のある目標)」を設定することで、経理の業務にスピード感と計画性が生まれます。例えば、「3か月以内に新しい経費精算システムを導入する」「半年後までに月次決算を2日短縮する」など、明確な期限を設定することで、業務の進捗を管理しやすくなります。

期限を設けることで、担当者は日々の仕事に優先順位をつけやすくなり、社内全体のスケジュール調整や他部署との連携もスムーズに進むのでおすすめです。また、期限付きの目標はモチベーション維持にもつながり、結果として業務改善や経費削減、組織全体の効率化を効果的に実現できます。

短期目標と長期目標の立て方

経理の目標設定においては、短期目標と長期目標をバランスよく立てることが非常に重要です。

短期目標は、請求書処理や経費精算のスピードアップ、ミス削減といった日常業務の効率化を数か月単位で確認できる内容が中心となり、担当者の達成感や評価にも直結します。一方、長期目標は、決算早期化や属人化の解消、システム導入による経費削減など、組織や会社全体の経営改善に結びつく大きな視点で設定する必要があります。個人のスキル向上と部署全体の成果を同時に高めるためにも、両者を適切に組み合わせましょう。

本章では、経理担当者が短期と長期の両方で実現可能な目標を具体的に設定し、業務改善や効率化を進める方法を解説するとともに、実際の達成に役立つ具体例を紹介します。

短期目標の設定方法と具体例

短期目標は、経理担当者が日常業務で改善可能な内容を明確に設定するのがポイントです。

例えば、下記のように数値を用いて達成度を管理できる目標が効果的です。

  • 月次決算の処理時間を1日短縮する
  • 請求書処理のミスを10%削減する
  • 経費精算の承認スピードを平均2時間以内にする

これにより、成果が見えやすくなり、モチベーション向上にもつながります。

短期目標は数週間から数か月で達成可能な範囲に設定することで、現場の改善活動と会社全体の経営効率化を同時に進められます。具体例を活用して、担当者一人ひとりが達成可能で明確な目標を立てることが重要です。

長期目標の設定方法と具体例

長期目標は、経理部門や会社全体の成長を見据えて設定する必要があります。短期目標で積み重ねた成果を土台に、より大きな改善や効率化を目指すのが特徴です。

具体例としては、下記が挙げられます。

  • 3年以内に決算早期化を実現し、月次決算を3営業日以内で完了させる
  • システム導入による経費管理の完全自動化を進める
  • 経理部門全体で属人化を解消し、標準化マニュアルを作成する

長期目標は個人だけでなく部署や会社全体に関わる内容が多いため、組織的な取り組みや経営戦略と関連させることが重要です。期限を設定し、達成度を定期的に確認することで、経理業務の質を高め、持続的な改善を実現できます。

経理の目標設定に役立つポイントとコツ

経理の目標設定を成功させるには、単に数値を掲げるだけでなく、実際の業務改善や効率化につながる工夫を取り入れることが重要です。属人化を防ぎ、標準化を進めることや、システム導入による経費削減は、会社全体の成果にも直結します。また、社員のモチベーションを維持しながら評価制度と連動させることで、目標達成の効果が高まります。さらに、他部署や社内全体とのつながりを強化することにより、経理の役割はより明確になり、経営判断にも貢献できるようになります。

以下では、具体的なポイントとコツを解説します。

属人化を防ぎ、業務を標準化する

経理の目標を設定するうえで、属人化を防ぎ業務を標準化することは非常に重要です。特定の担当者しか対応できない業務が多いと、ミスや遅延が発生した際に会社全体の管理に影響を与えます。そのため、業務フローをマニュアル化し、誰でも一定の水準で処理できるようにすることが求められます。

例えば、「月次決算の手順を標準化して全員が対応可能にする」といった目標を設定すれば、チーム全体で業務改善が進み、効率化や目標達成につながります。属人化の解消は、評価制度の公平性や組織全体の安定運用にも大きなメリットをもたらすでしょう。

システム導入で効率化・経費削減を実現する

経理の目標設定では、システム導入を活用して効率化や経費削減を実現することも有効です。請求書処理や経費精算を手作業で行うと時間と人件費がかかりますが、システムを利用することで自動化が進み、業務時間を大幅に削減できます。

例えば、「経費精算システムを導入し、処理時間を50%短縮する」「請求書の電子化で印刷・保管コストを年間20%削減する」といった目標が考えられます。こうした導入による効率化は、経理担当者の負担を軽減するだけでなく、会社全体の経営改善や業務精度の向上にもつながり、長期的な目標達成をサポートします。

モチベーション維持と評価につながる仕組みを作る

経理の目標は、達成度を評価できる仕組みとモチベーション維持が両立してこそ効果を発揮します。単なる作業の管理に終始すると担当者の意欲が低下しやすいため、成果を正しく評価し、達成した目標に応じてフィードバックや評価を行うことが重要です。

例えば、「月次決算を期日より早く完了した場合に評価点を加点する」といった仕組みを導入すれば、業務改善と社員の意欲向上を同時に実現できます。評価制度と目標管理を結びつけることで、経理担当者は自分の成長を実感しやすくなり、会社全体の効率化や経営に対する貢献度も高められるでしょう。

他部署や社内とのつながりを強化する

経理の目標設定を効果的に行うためには、他部署や社内とのつながりを強化することが欠かせません。経理業務は単独で完結するものではなく、営業や総務、人事など多くの部門と連携して進められます。そのため「他部署との情報共有を定期化し、月次決算の資料提出を100%期日内にする」といった目標を立てると、組織全体で業務改善を進めやすくなります。

部門間のつながりを意識した目標は、経営判断に必要な情報を迅速かつ正確に提供できる体制づくりにも直結します。こうした取り組みは、経理部門の役割を強化し、会社全体の成果向上をサポートする有効な方法です。

経理の目標設定の具体例

経理の目標設定は、担当者の経験や立場によって重点を置くポイントが大きく異なります。

初心者経理の場合は、まず請求書処理や経費精算といった日常業務を正確に行い、基礎知識を習得しながら効率化に取り組むことが必要です。中堅経理には、属人化の解消や標準化を進める業務改善、チーム全体に貢献できる目標が求められます。そして、管理職やベテラン経理は、会社全体の経営戦略を意識しながら、システム導入による効率化や決算早期化、経費削減といった大きな成果につながる目標を設定することが重要です。

本章では、キャリア段階ごとに有効な具体例を紹介し、個人の目標達成が組織全体の成果向上へどのようにつながるかを解説していきます。

初心者経理向けの具体例

初心者経理の目標設定では、まず日常業務を正確に遂行することが最優先となります。

下記が具体例です。

  • 請求書処理を100%期日内に完了させる
  • 経費精算の入力ミスを月に1件以内に減らす
  • 月次決算の流れを理解し、必要な仕訳を自分で作成できるようになる

基礎的な業務を確実に行いながら、業務内容を把握し、改善の余地を見つけて効率化に取り組むことが重要です。短期的には数値目標を活用して評価を受けやすくし、達成感を積み重ねることでモチベーションの維持とスキルアップにつなげましょう。

中堅経理向けの具体例

中堅経理は、基礎業務をこなすだけでなく、改善や標準化を通じて部署全体に貢献する目標を設定する必要があります。

下記が具体例です。

  • 月次決算を2営業日短縮する
  • 経費管理システムを導入し、処理時間を30%削減する
  • チームメンバーへの教育資料を作成して属人化を防ぐ

中堅層は、個人の業務だけでなく社内全体の効率化を意識し、会社の経営に関連する成果を出すことが求められます。達成可能な範囲で具体的な目標を設定し、評価制度と連動させることで、組織の成長と自身のキャリア向上を同時に実現できます。

管理職・ベテラン経理向けの具体例

管理職やベテラン経理は、会社全体の経営戦略を踏まえた大きな目標設定が必要です。

下記が具体例です。

  • 決算早期化を実現し、月次決算を3営業日以内で完了する
  • 全社で利用する経費精算システムを導入・運用し、年間コストを20%削減する
  • 経理部全体の標準化マニュアルを作成し、業務属人化を完全に解消する

さらに、人材育成も重要な役割であり、「部下が自立して決算業務を担当できるよう教育を行う」といった目標も効果的です。こうした目標は、会社の業績向上や組織力強化に直結し、経営判断を支える経理部門の存在価値を高めることにつながります。

まとめ|経理目標を設定し業務改善・効率化を実現する

経理の目標設定は、単なる業務の進め方を決めるためではなく、会社全体の成長や経営改善に直結する大切な取り組みです。業務の全体像を把握し、改善のアイデアを数値化して具体的に設定することで、達成度を客観的に確認でき、効率化や経費削減にもつながります。さらに、部署の目標から個人の目標へと落とし込み、SMARTの法則を活用すれば、実現性の高い目標を立てることが可能です。

初心者は基礎業務を正確に行うことを中心に、中堅は属人化解消や改善活動、ベテランはシステム導入や決算早期化といった大きな成果に焦点を当てるのが効果的です。短期と長期の目標を組み合わせることで、モチベーションを維持しながら持続的な成長が実現できます。

本記事で紹介したポイントや具体例を参考に、自社に合った目標設定を行い、経理業務の質を高めていきましょう。

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